カーボンナノチューブへの異種フラーレンイオンの

効率的注入

カーボンナノチューブ(CNTs)は,炭素によって作られる六員環ネットワークが単層または多層の同軸管状になった物質である.優れた機械的特性や電気的特性から多方面への応用が期待されており,ナノテクノロジーを代表する物質である.また,CNTsの内部空間には種々の原子・分子を内包することが可能で,選択的に内包することでCNTs自体の電気特性が局所的に変化することが知られている.

 一方,フラーレン(C60)は炭素原子60個からなる物質でCNTsと同じく炭素の同素体である.C60は図1のようにサッカーボール状の球体で内部に真空空間を持つ.優れたスピン性質や特異な形状から,量子コンピューターや動摩擦ゼロのナノギア,抗エイズウイルス剤など様々な応用が期待される.また,ヘテロフラーレン(C59N)はフラーレンの炭素の1つが窒素と置き換わった物質である.C60は負イオン化しやすく,C59Nは正イオン化しやすい.そのことからCNTs中にC60を内包した場合は半導体のp型,C59Nを内包した場合はn型の性質が得られることが知られている.

 本研究ではC60C59Nのペアイオンプラズマを生成しそれをCNTsに照射することによってCNTsに内包される量を制御し,その後C59Nを内包することでCNTsにおけるpn接合の性質を実現し,その特性を制御することを目的としている.本研究でC60をペアイオンプラズマ化するプラズマ源を図2に示す.



図1.フラーレン(C60)

図2.プラズマ源



英 洋平