負イオン磁化プラズマ中フロー速度シア不安定性の体系的解明

 

 

プラズマを構成する荷電粒子群のフロー(流れ)速度がその流れの方向と垂直に変化するものを,「フロー速度シア」と呼ぶ.あらゆるプラズマ中に必ず存在するあろうこの一見単純な現象が,様々な種類の低周波波動の安定化及び不安定化,粒子の輸送,さらにプラズマの構造形成などに深く関与しており,プラズマ物理学において大変重要な研究分野となっている.

一方,観測衛星によりオーロラ圏で検出された低周波揺動がフロー速度シアに起因していることが明らかとなるなど,宇宙プラズマの分野においてもフロー速度シアは本質的な役割を果たしている.しかし宇宙に存在するプラズマには微粒子を含んでいるものも多い.プラズマ中の微粒子は特殊な状況下でなければ負に帯電し,このとき電荷中性条件のためプラズマ中の電子が減少する.この電子の減少が静電波の分散関係を著しく変化させることが知られており,宇宙プラズマの挙動を把握するにはこの静電波の特徴を考慮する必要がある.この電子減少の効果は負イオンの導入によっても得られ,イオンが主に関与する静電波の特徴は微粒子プラズマ中のそれとほぼ等しくなる.

本研究室では負イオンを含むプラズマ中のフロー速度シア駆動低周波不安定性の解明を目指し,フロー速度シアの制御を可能とする分割型電極を装備したQマシーンを用いて実験を行っている.

 

 

 

実験装置の概要図.イオン源と電子源を対向に配置させたQマシーンでカリウムプラズマを生成し,そこに大きな電子付着断面積を持つ六フッ化硫黄を導入することにより負イオンプラズマを生成する.

 


市來 龍大