プラズマCVDによる構造制御された

単層カーボンナノチューブの成長

 

 

電気的・機械的に優れた特性を持つカ−ボンナノチュ−ブ(CNTs)は, 現在様々な分野への応用が期待されている物質である. 特に, 一層のグラフェンシ−トからなる単層カ−ボンナノチュ−ブ(SWNTs)はカイラリティ−により金属的もしくは半導体的と電気的特性が顕著に変化するという特徴を持っており, 今後のナノエレクトロニクス分野には欠かすことの出来ない物質として多くの注目を集めている. このようなCNTsの形成方法にはア−ク放電法, レ−ザ−アブレ−ション法, 熱CVD法, プラズマCVD法等がある. とりわけ, プラズマCVD法は, 低温でのCNT形成が可能, さらにはCNTsが高配向で形成される等の今後のCNT応用に関して有用な利点を数多く有するCNT形成法である. しかしながら, これまでプラズマCVD法によって形成されたCNTsはすべて多層カ−ボンナノチュ−ブに限られており, このことがプラズマCVD法をCNT形成分野に適用する上で非常に大きな障壁となっていた. そこで我々はプラズマCVD法による単層ナノチュ−ブ(SWNTs)の形成並びにその構造制御を目的に研究を展開している. 実験は, メタンと水素の混合ガスを原料ガスとする高周波放電拡散プラズマCVD装置を用いて行われた. この結果, プラズマCVD法によるSWNT形成に世界で初めて成功し, さらにプラズマCVDの利点である配向制御をSWNT形成分野に適用した結果, 孤立垂直配向SWNTsの形成に成功している(図(a),(b)).  

またSWNTs成長における詳細なプラズマ効果の解明に関する研究を行い, プラズマCVD特有のエッチングを伴う成長機構が存在することを明らかとした. これらプラズマCVD中SWNTs成長に関して実験結果を極めて忠実に表現可能な成長方程式を導出することにも成功している. さらに成長方程式を利用することで, SWNTs成長と基板入射イオンエネルギーとの間に極めて密接な相関関係が存在することを見出している(図(c),(d)).

 

. プラズマCVD法により形成された孤立垂直配向SWNTsのSEM(a), 及びTEM像(b). (c) プラズマCVD成長SWNTsラマンスペクトルの成長時間依存性. (d) ラマンスペクトルG-バンド絶対強度(IG)の成長時間, 及び基板入射イオンエネルギー依存性.

 
 

 

 

 

 

 

 



加藤 俊顕