不均一磁化有限プラズマ中電磁波の偏波方向反転機構

 

 

磁化プラズマ中を伝搬する電磁波は荷電粒子と相互作用し,プラズマ密度,温度,磁場などの影響を大きく受けるため,その伝搬機構は大気中と大きく異なる.その中でも,電子サイクロトロン周波数と電磁波の周波数が等しいときに起こる電子サイクロトロン共鳴(ECR)は,電磁波のエネルギーが効率よく電子に吸収されるため高密度プラズマ生成やプラズマ加熱に応用されている.通常,ECR点では右回りの偏波を持つ右旋偏波のみが吸収されると考えられていたが,逆回りの偏波を持つ左旋偏波もECR点で吸収されることが近年観測され,その物理機構は現在明らかになっていない.また,左旋偏波と右旋偏波ではその伝搬の様子が異なることから,従来とは異なる加熱やプラズマ生成が期待される.

本研究では,左旋偏波のECR点における減衰機構を解明し,更に左旋偏波と右旋偏波がプラズマ構造形成に与える影響について調べることを目的とする.

図1はヘリカルアンテナを用いて左旋偏波を入射したときに測定された (a)左旋偏波成分と (b)右旋偏波成分の電場ベクトルを示しており,伝搬の途中で左旋偏波が減衰すると共に右旋偏波が増大し,最終的にECR点で減衰していることが実験的に明らかになった.また,この現象が実験室プラズマにおいて必然的に存在する境界条件の効果を考慮することで説明できることが明らかになっている.

現在は,図2に示すような実験装置でプラズマ中のイオンフローエネルギーを制御することに成功し,ECR加熱を行った際に起こるプラズマ構造形成に対するイオンエネルギーの効果,及び左旋偏波のECR減衰の効果について詳細に調べている.

 

2イオンフロー制御型プラズマ源概略図,及び原理図.

 
 



1:左旋偏波から右旋偏波への

偏波方向反転の観測結果.

 
高橋 和貴