プラズマ制御によるシリコン内包カーボンナノチューブ創製
現在,ナノサイズのシリコンクラスターが光電子工学・ナノ電子工学を支える新たな電子材料の一つとして期待されている.
近年の研究報告からナノサイズのシリコンクラスターが可視光領域での発光特性を持つことが明らかにされた.また,これまでシリコンのみでは形成することが難しいとされていた中空球殻構造シリコンクラスター(シリコンフラーレン)が,中空空間に異種金属原子を内包することによって安定な状態で形成されることが明らかにされた.これらのことからナノシリコンクラスター・シリコンフラーレンは,その発光特性や安定性を用いた半導体デバイスへの応用が考えられている.
本研究室では,希ガス雰囲気中で電子銃を使って生成したSiプラズマを利用したナノシリコンクラスターの形成を試みており,最終的には未だ報告例のない希ガス原子内包シリコンフラーレンの形成およびシリコン内包カーボンナノチューブの創製を目指している.
藪野
正裕
現在,アルゴン(Ar)雰囲気中で電子銃[図1]を使って生成したSiイオンが結合する過程で形成された物質をレーザー脱離飛行時間型質量分析器(LD-TOF MS)を用いて分析した結果[図2],ナノシリコンクラスターが形成されていることが確認された.またAr内包シリコンフラーレンと考えられる質量スペクトルが観測されており,Ar内包シリコンフラーレン形成の可能性が示された.今後はこのAr内包シリコンフラーレンの形成条件を明らかにすること, および形成されたシリコンクラスターをカーボンナノチューブに内包させ, 新機能性カーボンナノチューブを創製すること
を目指す.